20160527

地層に浸み込む


川司寿乃さんのポストカードを額装して壁に飾りました。これ、早川さんの手彩色なのです……!すっごく細かくて綺麗で、どれだけ近づいて観察してもどんな風に描かれているのかよく分からないような繊細な筆致です。白黒の印刷のポストカードの上に着色されているそうです。
MOEで長野まゆみさんの鉱石倶楽部(当時は「クリスタル・ファンタジー」)の挿絵を描かれていた頃から大好きなイラストレーターさんなので、ご本人が描かれたものを手に入れられてとっても嬉しいです。大事にせねば。電柱や地層が描かれているのも好みです。
ちなみに札幌のB・C・Sという雑貨店で購入したのですが、絵柄違いでまだ数枚あったかと思います。ご興味ある方はぜひ。


これはちゃんと額装せねばなるまい!と考えてこんな感じにしてみました。額装はちょっと慣れてきましたよ。今回の額はもともと家にあって気に入っているものなので、マットだけ注文しました。多分ちゃんとできている……と思う。もっとセンスがあれば色付きマットもかっこよく使ってみたいなあ。





ントリキュールをもらったので水に少しだけ混ぜてミントジュース的に飲んでいた日。甘くておいしいです。ふと周りがミント物だらけなことに気づく。どんだけ爽快感が欲しいのか。
リコラの水色の、ミントで水色で煙草のような箱に入っているというのがすごくツボです。煙草の箱というものの存在が好き。右上のウィルヘルミナはパッケージがかわいくてなんとなく買ったら五百円玉くらいの巨大なミントタブレットが出てきて驚き。SFの未来の栄養食みたいでちょっと面白い。藤子漫画とかにありそう。



水話など。ラルチザンの「タンブクトゥ」のサンプルサイズがあるのですが、気温が高い日に着けたくなる香りです。これ好きだなあ。ウッディですが、私にとっては学校や公営のプールの香り(笑)。塩素っぽく感じる。そこが好きです。子供の頃、夏の日差しの中で友達とパタパタと水際を走っていたような光景が浮かぶ。暑い日に水に飛び込むような感覚で着けています。
タンブクトゥという名前も好き。街の名前(マリのトンブクトゥ)ですが、なんだか聞いたことがあるような?と思っていたら、大岡信さんの詩で出てくるものがあると気づき。


地名論

水道管はうたえよ
御茶の水は流れて
鵠沼に溜り
荻窪に落ち
奥入瀬で輝け
サッポロ
バルパライソ
トンブクトゥーは
耳の中で
雨垂れのように延びつづけよ
奇体にも懐かしい名前を持った
すべての土地の精霊よ
時間の列柱となって
おれを包んでくれ
(以下略)


何年か前に大岡さんの詩集から書き留めていました。札幌とトンブクトゥとが一緒に出てくる詩ってさすがにこれしかなさそうかな。札幌って元はサッポロベツなんだよなあとこれを読むと思います。ほかの日本の地名はすべて漢字で札幌はサッポロ表記なんですよね。


最近気になるのはジョー・マローンとディプティック。どちらもここ数年日本でよく見かけますが「レア パフューム」という本で詳しく読んで興味を持ちました。ディプティックって1960年代からあるんですね。もっと新しいブランドかと思っていた。最近ボトルのデザインが卵型に変わったのがかっこよくて好きです。
ジョー・マローンの「ウィステリア&バイオレット」、フェミニンかつどこか日本的。ウィステリアは藤だそうで。藤と菫。ジバンシイのオートリードと調香師が同じクリスティーヌ・ナジェルさん。今売れっ子らしい。オートリード、昔家族からもらったのですが妙に良い出来の香りとは感じていました。エルメスのジャン=クロード・エレナ氏と調香の印象が通じる?と思っていたらナジェルさんは少し前にエルメスの専属調香師になったとか。納得。
Christine Nagel :: Perfumers
オタクの性で調香師の作品リストとか見てしまいます。
私はなんとなくモーリス・ルーセルと趣味が合う気がする。今一番よく使う資生堂のウィアがそうだし、グッチのエンヴィも昔ちょっと使ってたな。ルタンスのアイリスシルバーミストもこの方なんですね。

20160519

パンセ


のスミレです。あまり存在を認識していなかったけれどそういえばあったやつ。なので細かい種類はわからない。野の花だからか基本元気で特別手入れをしなくてもサクサク咲きますね。




黒葉菫。葉がほかのスミレに比べてかなり濃い色です。スミレってやっぱり顔みたいだなあ。私にはブルドッグに見える。「パンセ」はフランス語で思考とか思想の意味で、頭を垂れて物思いに耽る人にもたとえられたのだそうで。「花の名随筆3 三月の花」という本のスミレの項で読みました。
去年はすごい勢いで葉を虫に喰われていたのですが、特に対策もせず放っておいたら(おい)今年は全然喰われないようで。なんでだろう。虫側も味に飽きるとかあるのだろうか。




最近読んだスミレの本4種。表記がちょうど「すみれ」・「スミレ」・「菫」と全パターン(?)ある。どれも面白かったです。スミレの本ってなぜかあまりハズレらしいハズレというのがない気がする。そもそもニッチだから適当に作るみたいなことも起こらないのだろうか。
松田瓊子「すみれノオト」は装丁の細部まで「わかってる」感が強くてこれきっと有名な方の仕事だろうなあと思ったら名久井さんでした。
「バラの村、スミレの村」は写真もよいですが文章が特に面白かったです。スミレの歴史が読みやすくまとめられていて勉強になりました。フランスでスミレの町というとトゥールーズしか知らなかったのですが、こちらで紹介されているのはトゥーレット・シュル・ルーという村。小さくてかわいらしい村がスミレに溢れていて素敵です。


Mimas@Instagram
上記の本たち含め、読書記録はインスタグラムに都度載せています。ノートの記録が続かなくて人の目があれば続くのでは……という下心?でなんとなく始めたんですが、自分の場合は合ってたようで一応続いています。撮って書く形式を最初に決めてしまったので深く考えずにサカサカアップできるのが良かったのかな。

20160511

見えるし見えない



索していて見つけた、1940年の女性のソックスガーター写真。第二次世界大戦中にテムズ川で働いていた女性とのこと。私、記憶にある限りで女性がこの形の靴下留めをしているのって1980年代以降(というか「1999年の夏休み」以降?)しか見たことがなかったので、これはずば抜けて古い時代です。40年以上さかのぼる。
えっこの時代に女性が紳士用の靴下留めを使っていたの?って驚いたのですが、考えるとそもそも靴下がずり落ちないようにするための実用品なわけで、肉体労働をするなら女性もズボンをはくし、ズボンをはくならそれ用の靴下もはくし、靴下をはくなら靴下留めを使うこともあるよなあ。目から鱗。外からは見えなかったでしょうが。
戦時中に限らず肉体労働に従事した女性がズボンをはいていたことはずっと昔からあったわけで、普通に靴下留めを使っていた女性もいたのだろうか。わかりませんが。
そして単純にこの女性のスタイルがなんだかかわいい。作業着とキャップと紐靴と。靴下留めもライン入りで。




イギリスつながりで若いころのエドワード八世。膝下に豪華なガーターがあるのがお分かりでしょうか。1911年のガーター勲章の叙任式とのこと。
これは当時としても時代がかった盛装だと思いますが、確か昔は男性のこういう形のガーターってわりと外から見えるものだったはず。ズボン自体が短いので靴下を留めるガーターが見える時代もあり、一種の装飾品だったのだと思う。シェイクスピアの「十二夜」にも黄色の靴下に十字のガーターという派手な格好の男が出てきます。時代によって外から見えたり隠れたりするのがガーターというもののようで。

20160509

こどもの菫


ルバンのヴィオレ・パンセ。菫色のインクです。普段持ち歩いているラミーの万年筆用に買いました。ラミーはインクによっては詰まることがあったのですが、エルバンは同じシリーズのディアボロマントが詰まらず使いやすかったので2つ目を購入。ディアボロマントと菫。少年的。
なんでもこのヴィオレ・パンセは第一帝政時代から1966年までフランス全土の小学校で指定色として使われていたそうな。菫色のインクが指定色……!おおフランス。


ラミーのサファリはプラスチックかつ書きやすいのでボールペン感覚で使ってます。今までペリカンのペリカーノJr.とか貰いもののウォーターマンとかパイロットとか、何度か万年筆の持ち歩きに挑戦してみてはいつの間にかキャップが外れていてアレレとなったり、大仰に感じたりして外で使うにはいまいちしっくり来なかったのですが、ラミーが一番気軽に持ち歩きやすいです。やっと外で使える万年筆を見つけた感じ。




今様北海道土産品的デザインに惹かれ購入したハンカチ。熊の周りにスズランなどの花々が描かれていてかわいい。色違いでキツネやフクロウもありました。Maduのものです。バンダナのように首に巻いたりもしてみたい。


熊……。昔、祖父の家の風呂が壁に動物の口が開いた蛇口が付いていてそこからガーっと湯が出るやつだったのですが、普通それってライオンじゃないですか。その形状のものに普通とか普通じゃないとかの区切りがあるのかわかりませんが、まあライオンだと思うんです。多分。
祖父の家のは熊でした。ぐわっと開いた熊の口から湯が出てるの。子供のころは特に何も思わなかったけど、大人になってからふと思い出してンッ?となった(笑)。土地柄がそんなところに表れていたのだな。



『会議は踊る』
この間「制服の処女」も見たので偶然ウーファ映画が続きました。「メトロポリス」といい今の目から見ても大作で、ワイマール時代のウーファって本当にゴージャスな会社だったのだな。
途中のバレエ・リュスっぽい場面から楽しくなりあとは最後まで一気に見ました。エンタメ作ながら小粋でなんかイイ。バレエ・リュスといえば、宝塚の「ロシアン・ブルー」とかペトルーシュカの衣装もまんま再現してあって好きだったなあ(ロシア・アバンギャルドの建築家メーリニコフの六角形の窓らしきまで再現してあって、大野くん(演出家)(マニア)……となった)
DVDでは淀川長治氏の解説が見られるのも嬉しい。私は映画評論家は淀長派です。趣味が合う……というかそもそも私の映画鑑賞のベースの一部を作った人というか。十代の頃初めて読んだ評論本も淀長先生だったような。「プリシラ」がイイとか、「イヴの総て」と「サンセット大通り」なら「サンセット」とか、わ、分かる!そういう感覚を映画を見る時の視点に据えていいんだ!と教えてもらった人です。
會議は踊る 
↑こちらで淀川さんの解説は全部文字で読めます。「制服の処女」の解説も面白いのでおすすめ。東和映画の社長の奥様が新婚旅行先のドイツで気に入って買ったんですねえ。


『みんなのアムステルダム国立美術館へ』
 「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」とこれだとこっちのほうが万人にオススメな感じ。さくっとまとまってるし学芸員のキャラ立ってるし市民と美術館の対立なんかもありつつ、ドラマっぽい面白さ。
個人的に面白かったのは館内の壁の色をどうするかですごく時間がかかって(なんと6年!)、内装会社の担当者が半ばキレてたところ(笑)。突き詰めると「芸術の専門家が思う作品(しかも「夜警」とかの名作)を引き立てる壁の色」「内装の専門家から見た良い色」「美術館の運営者から見た客を呼び楽しませる色」の対立のような。そりゃ簡単にはすり合わせられなさそう。あとあっちの人って色にとてもこだわるなあと改めて。確かに趣味のよさって色に依存する部分は大きい。


『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最後の7日間』
何年かぶりに。この映画辛くて、ローラがかわいそうすぎて見てられないんだけども。特に親友の女の子に「あなたはそんなことしちゃダメ!」って半狂乱になる場面が辛い。自分は穢れていると思っているんだもんな。
デヴィッド・リンチは特にファンではないけどわりに好感は抱いてる、くらいでしょうか。アメリカのダイナーとか丸太小屋とか何もない山道とか、そういうものを魅力的に撮れる人というだけで点が甘くなる部分もあり。画面の質感や色が好きだな。 今回気付いたけど、ツイン・ピークスって風景の既視感があって、だから見てて妙に身につまされてリンチ作品の中でもより辛いのかも。