豊平館は照明のシーリングの装飾がきれいです。部屋によって描かれている植物が違って、この部屋は薔薇。
カーテンも、この写真だと見えにくいですが薔薇の柄です。つまりこの部屋は薔薇の間なんですね。と数分経ってから気づきました。薔薇だらけでも色調も抑えめで華美でなくまとまっているのが昔の立派な洋館らしいなあと。
森田たまや吉屋信子、その他さまざまな作家が大正~昭和初期あたりに書いた札幌についての随筆や小説を読むと、大抵すごくヨーロッパ的で美しい街だなあ的なことが書かれているんですよね。当時イギリス人に「日本にもこんな街があるんですね」と言われただとか。
昔はその意味がいまいち分からなくて。まあ碁盤の目みたいで整ってはいるかもだけど別に普通では?と。ビルばっかりだし。
しばらくして分かってきたのが、つまり札幌の街並みは高度経済成長とか札幌オリンピックのあたりで相当変化したのだということです。黒澤映画の『白痴』にも映し取られたような、開拓によって欧州的な洋館が立ち並びつつも素朴な街の姿が、昭和中期を境に現代的なビル街に再開発されたと。
で私は再開発以降のビル街の札幌しか知らないので、大正や昭和初期の札幌の描写を読むと??となっていたというわけですね。昔は小樽みたいな感じだったのかな。
昔の洋館や建物は北海道開拓の村でも見られますし、中心部なら時計台や旧道庁もありますが、中心部から近めで気軽に行ける洋館のひとつが豊平館かなと思います。
豊平館のある中島公園はかつて博覧会が開かれていた場所でもあり、北極塔(もうないですが)や天文台(今もあります)もあって好きな場所です。小堀遠州の茶室・八窓庵もあったりします。森田たま等が言うところのかつての札幌の面影を残した場所といえるでしょうか。