20190221

大帝の星の下に

下鉄でボーっとして逆方向の車両に乗ってホームの下の通路を渡るということを数年ぶりにやった……。面倒くさいのと大丈夫か自分、というのはあるんだけど、この通路が昔からなんか好きでもあります。雰囲気があって。





フェや喫茶店って結局雰囲気とか建築自体が好きなお店によく行くことになるなあ。インテリアとか。味も大事ですけど、今時そんなおかしな味のもの出すカフェもそうそうないしね。空気を吸いに行ってるんでしょうね。
上はサッポロ珈琲館月寒店、下は続けてハシゴしたカフェ・ノエル。サッポロ珈琲館は倉本龍彦さんという建築家さんの建物を改装したお店で、外観も中のこういう階段とかも好きです。倉本さんの設計した一般住宅をたまに市内で見かけますが、北海道らしい素朴さと適度なモダンさとがあっていいなあと思います。
カフェ・ノエルは札幌でとても有名な宮越珈琲の兄弟のおひとりのお店。落ち着けます。



 ール・ラガーフェルドが亡くなりましたね。85歳、あらゆることをやり切って天寿を全うしたという感じがします。皇帝らしい幕引きだったのではないかな。
10年ほど前からこのブログにも何度か書いたように思いますが、私は好きなデザイナーは誰かと聞かれたらウーンンンと悩んだ末に結局カール・ラガーフェルドです、と答える人間だと思います。二番目がマックィーンかジル・サンダーかなあ。多分20年近く変わってないと思う。カールもマックィーンももういないのだなあ。 

私が中学生だった90年代半ば、パリコレのショーを見る手段は事実上ふたつしかありませんでした。すなわちテレ東の「ファッション通信」を見るか、「ハイファッション」「SPUR」等のモード雑誌を見るかです。地球の裏側で行われるショーの真っ最中にリアルタイムでスマホでコレクション動画が見られる現代からすると、隔世の感が凄まじいですが。
そんな片田舎の中学生が雑誌のコレクション特集をパラリと開いたとき、いつも必ず目に付くブランドがふたつありました。シャネルとコムデギャルソンです。この2ブランドの服は他と何かが違っているように思えました。テイストも全く違うこれらに何を感じたのか今となっては自分でもわかりませんが。全体のバランスにピンとくるものを感じていたのは覚えてる。
そのうちカール・ラガーフェルドという人と川久保玲という人を知り、彼らは自分の中で特別な、ある種「別枠」の存在になりました。手放しで好きかといわれるといまいちわからないんだけど。これは今でもだな。

当時から今に至るまでそれらとはまるで違う種類の服を着て生活している私ですが、たとえば70歳くらいになった時にどのデザイナーが一番好きだったかなと思い返すと、ちょっと眉根を寄せてから……カールかな。と思う気がします。
私にとってファッションとはきっとカール・ラガーフェルドのことです。サンキューカール。


シャネルもカールも歴史が長いのでどこかだけ選ぶというのも何やら難儀ですが、2004年あたりのコレクションが結構印象に残っています。ちょっとロリータ的というか、少女っぽいルックがわりと出ていた記憶。



モデルは当時のカールの推しモデル、キアラ・ニュージェント。ザ・ドーリー。



これもすごいよね、2012年の巨大水晶セット。グラン・パレに常にこういう規模。予算が潤沢ってすばらしい(そこ?)(いやでも結構そこだよね・笑)。ぐうの音も出ないスペクタクルがカールのシャネルにはあったのだなあ。
このときの、水晶のクラスタがヒールの根元やバッグの留め金から生えたようなデザインの小物類も大好きでした。鉱物幻想……そういえばカールはドイツ人ですね。あ、なんか今自分の趣味に納得したぞ。

20190208

ローカルの彼女





測史上最強クラスの寒波とかで。今このへんはマイナス11度らしいです。何を言っているんだ。まあ北海道の室内は暖かいので平気なのですが、それでもストーブからはあまり離れたくない。普段室内ならそれほど冷えない部分が今日はふと寒い感じです。末端からシンシンと来る感じ。
数年前に無印で買ったモフモフ室内履きを出してきました。この写真股下20センチくらいに見えるな。

ここ数日はさすがに危ないということでトイレの元栓を閉めて水を抜いています。よく閉めていることを忘れて普通に流そうとしておっとってなる。
なぜ元栓を閉めるかといいますと、水が入ったままの水道管は破裂する可能性があるから。氷は膨張するからね。ガッチリ凍って水が出ない! となる可能性も。札幌だと例年はそれほど気にしなくてもいいけど、今年はな~。
以前はテレビCMでも元栓を閉めよう! みたいなのが流れていた気がしますが今年は見ないかなあ。ローカルニュースだと気を付けてください的な内容のを放送してます。



画ちょっと見たものたち。

★「アイ、トーニャ」
トーニャ・ハーディングって世代で認知度がパキンと分かれそう。私は記憶にあります。当時連日テレビでやってたのよ。私の世代だと最初に覚えたスケーターの名前が伊藤みどり、次がハーディングとかでは。主演のマーゴット・ロビー(1990年生まれ)は世代的によく知らなかったそうで。アメリカ人でもそうなのだな。

アメリカ人ってアメリカを映画に撮るの上手いよね。特に「アメリカってやばい国だよね……」って自分で自国にツッコんでる感じの、虚無な環境のやつ。超お金持ちとか逆に超貧乏とかでたいてい機能不全家庭の。これが「フォックス・キャッチャー」と比較されたのも分かる。
あとフィギュア好きから見てもスケートを滑る描写が上手い。フィギュアって競技自体が難しすぎるのか、フィクションで過不足ない映像にできてるのはこの映画が多分初です。「俺たちフィギュアスケーター」も突き抜けててアリだけど(笑)。

全体的に興味深かったし評価も高いようで特に言うこともないですけども。なんとなく考えたのが、伊藤みどりとハーディングの運命を分けたものはなんだったのだろうと。いやみどりちゃんは100年に一人の天才だし明るいし、国も他にも色々条件は違いますが。
でもハーディングも地球で二人目のトリプルアクセルを飛ぶ女子選手だし、努力してないわけがないし。みどりちゃんだってハーディングに劣らず環境的な厳しさはあったろうし。マスコミに色々書かれたのも同じ。
考えたところ、ハーディングにはつまり山田満知子コーチがいないよなあと。満知子先生のようなでっかく愛してくれる大人がいない。コーチ的な母親は厳しすぎてほぼDVだし、旦那はああだし、親身に話を聞いてくれる大人なんていなさそう。
満知子先生も厳しさもあるだろうけど真っ当な人格者なわけで。ハーディングにはそういう人、多分いなかった。二度オリンピックに出場した史上二人目のアクセルジャンパーなのに。そういう映画なのだなと。


★「スリー・ビルボード」
おっもしろい……。映画史に残る作品とも評されるようですが分かる。というかもう既に残ってるのか。
「アイ、トーニャ」と通じるなあとも思いました。経済的にも厳しい環境で生きるアメリカ人を描いた、アメリカの自己ツッコミ的な映画であること。そして「信頼できない語り手」的な、真実とは様々な面を持つものだということを表した映画であること。
トーニャもこの主人公のミルドレッドも、見ていくうちにあれ彼女ってそもそもいい人なのか……? こっちの人は悪人なのか? そもそも悪人ってどういう人のことだっけ? みたいな感覚になってくるんですよね。そう作られている。

これが今日的なアメリカ映画の在り方なんだろうなあと。すなわち、貧乏な白人にも言い分がある。真実はひとつじゃない。その感覚が一般化したのが今ということか。
トランプ大統領が誕生してからみんながより考えるようになったテーマなのだろうなとも。トランプ本人がどうというより、彼を支持せずにいられなかった人たちの環境についてもちゃんと考えるべきなのでは。という感覚。


★「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」
ドリスって好きだな。センスのよいハイブランドを教えてくださいと言われたら必ず名前の挙がるブランドじゃないでしょうか。ドリスとかプラダとかボッテガとか。ジュンヤさんとか。
本人の佇まいからも想像できるように大変きっちりした人らしい。旅行の予定を分刻みで立てて笑われるんだとか。だからこそ独立ブランドとして数十年続いているのかな。
アシスタントのデザイナーたちが盛んにアイデアを提出して、それを通したり却下したり吟味していくのがドリスであるということがわりと明確に映されていて、ブランドってやはりそうなのだなと。
布がいっぱい出てくるので布フェチにおすすめ。個人的にはミナペルホネンを連想したり。リアルクローズに徹する布屋さん的デザイナー。

そういえば宣伝映像で入っていたファッション関係のドキュメンタリー映画が「メットガラ」「ディオールと私」「ファッションが教えてくれること」で納得。会社も何個もこういう類の映画配給しても、出来が良いのがどれかは自覚してるんだなあと(笑)。
私は以前これ系の映画でおすすめは「ディオールと私」「ファッションが~」「ビル・カニンガム&ニューヨーク」とブログで書いた記憶が。一つ足すなら「メットガラ」だと思うし。あと映画じゃないけど「サイン・シャネル」も傑作です。