20160222

ブックレットと展覧会





書記録のインスタでもいくつか載せましたが、最近INAX BOOKLETをよく読みます。INAX BOOKLETというのはINAXが企画展をするときに出版するカタログ的な本で、長年続いているのでたくさん出ています。
http://www1.lixil.co.jp/publish/ (今はLIXIL BOOKLETという名前)


このシリーズを知ったのは数年前に小樽の書店で「夢みる家具 森谷延雄の世界」に一目ぼれして購入したとき。森谷さんの作る大正時代の乙女家具の素晴らしさはもちろん、祖父江慎さん(コズフィッシュ)のADがものすごく素敵で。手がけられたものはどれもカッコよくて美しいです。祖父江さんて本当に天才なのだなあとINAX BOOKLETを手に取るとしみじみ思います。


企画展で取り上げられた題材も好みなものばかり。科学や建築が多いです。INAXなのでトイレやドアノブ等の室内の部品や装飾についても多い感じ。
読んだ中で特に好きなのは
★「植物化石  ――5億年の記憶」 (膨大なプレパラートを整然と陳列した横1mくらいある折り込みページが圧巻)
★「にっぽんの客船 タイムトリップ」(装丁が!格好良すぎる!クラシックな船+機械みたいな世界好きな方、絶対好きだと思います)
★「ガラスと建築 光を装飾する」(思いがけず北海道の昔の建築における硝子の話が読めた)
等。どれもこれも着眼点がよくて感心してしまう。INAXってセンスがいいんだなあ。




次はこれを読んでみたい。月と建築!


このシリーズが好きな理由、展示会の冊子ゆえに存在感が絶妙に軽いからもあるのかなと。その軽やかさにデザインの良さも合っているし。もともとパンフレットとかリーフレットみたいなものの軽妙さが好きです。メインの展示は別にあって、それに付随するものだというのも。
「行ったことのない展示の図録」って昔から何故か惹かれます。いやできれば行きたいけど(笑)、何年も前に終わっているイベントって、もう絶対に行けないのだという、そのこと自体がなんだか儚くて好きだな。昔の欧米や日本の万国博覧会とかも。
 

20160214

プラスティック・シティ



「北の想像力―――《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅」(編者・岡和田晃)


『気鋭のSF批評家たちが、新旧の<北>の文芸作品とSF作品を<思弁小説>としてとらえ直し、「辺境」でありながら「世界」を志向するその先進性について論じた日本文芸評論史上画期をなす空前絶後の評論大全。』


面白かったです。<北>、特に北海道で想像されたSFを軸とした辺境ゆえの独自の文学性を、複数の評論で分析している本。800ページ近い大著ですがぐいぐい読めました(なかなか強烈な分厚さですが)。もともと道民&小説が好きという単純な理由で北海道の小説をわりに読むので、その意味でも楽しい。加えて「北海道+SF」という視点にハッとさせられました。


安部公房、吉田一穂、荒巻義雄、円城塔、中野美代子etc.、この人の文章好きだなあと思っていた作家がざくざく出てきました。嗜好を言い当てられた上に自分の根本を垣間見たような気持ち。特に安部公房は不思議に自分の文章嗜好の根幹近くにあると以前から思っていて。この本でルーツががっつりと北海道だったと知りました。
あと私の映画ベストで必ず入る唯一の作品が「オズの魔法使」で、子供の頃からやたら好きなのが続編の「Return to OZ」なのですが、それらも出てきたり。


どの評論も面白いけど、横道仁志さんの「武田泰淳『ひかりごけ』の罪の論理」と、宮野由梨香さんの「「氷原」の彼方へ――『太陽の王子 ホルスの大冒険』『海燕』『自我系の暗黒めぐる銀河の魚』」が特に印象に残ったかな。どちらも<北>から更に一歩踏み出している感じが。
宮野さんが取り上げられている山田ミネコさんの漫画「自我系の暗黒めぐる銀河の魚」を読んでみたい。小樽が舞台のSFなのですね。


対談のページで小谷真理さんが指摘されていますが、アメリカSFと北海道SFは似ていると。歴史や土地に類似性があるのかな、どこかぽっかりと穴が開いているようなツギハギのような感じも似ているかも。その空白や空虚を埋めてきた想像力の形が、寄る辺なさゆえの独自性や人工的なSF性なのか。「ツイン・ピークス」や「ファーゴ」に既視感を覚えたり。
そして編者の岡和田さんの
『私も北海道生まれなのですが、スペキュレイティヴ・フィクションの描写に不思議と「リアル」なものを感じてきました。ブラッドベリの描写の方が日本の近代小説よりも「リアル」に思える瞬間があるのです。(中略)北海道の気候風土はイギリスや北欧に近いものがありますから、そのあたりに共通するものがあるのでしょうか。』
これも分かる気が。ブラキストン線以北ゆえか亜寒帯ゆえか?本州や四国の風景を異国に感じるようなところは普通にあります。ドイツやイギリスで子供心に「北海道とあんまり風景が変わらない?」と微妙にテンションが下がった記憶もある(笑)。


読んでいて思ったのが、自分はSF小説を遠い世界の物語というより、どこかリアルなものとして消費しているのかもということでした(あらゆるSFが「遠くて近い」ものであるにしろ)。妙に身近なのですよね。見慣れた札幌の直線的・人工的な街の風景はSF的と言えるだろうし、外で小1時間ぼーっとしてたらまあまあ死ぬ環境ってわりとディストピア感あるし(笑)。ファンタジーかつリアルなのかな。アンナ・カヴァンの「氷」もリアルだった。硬質で厳しいものにこそ、親しみを覚えます。






たら寒かった日に通りがかった温度計。マイナス3.2度……思ったほど低くないなあと思ってから、いやいや低いな?と。寒さの基準が何段階かに麻痺している自分を感じた日。あとこの写真、家に帰ってからサムネイルだと一瞬「1921年」に見えてちょっと怖かったです(笑)。寒い上にタイムスリップは遠慮したい。

20160205

乙女のサルベージ



らら。つららって見た目が好きです。硝子の剣みたい。試験管っぽくもある。
ここの建物はいつも派手にできるなあと思って見ています。この3倍くらい長いときもある。つららは屋根の形だとかの具合によって場所でけっこう育ち具合が違います。雪が水分にならないとできないし、暖房や日差しなんかも関係するのでは。かといってつららのできやすさを狙って建物を作るわけもないだろうし(まあ危険だし)、つららのスケールは偶然の産物という感じ。人工物と自然が同居する冬。



書店の70円ワゴンセールで恩地孝四郎の日本児童文庫を数冊発見し、アアアーと焦って買いました。欲しかったというよりこの値段で売れなきゃ処分されちゃうんじゃ!?と怖くなってつい……売れなさそう感が漂ってたし。しかも一冊同じの持ってるのに。まあいいか。かわいいので欲しい方いましたら言ってください(笑)。



乙女でしょ。ちなみに元々持っててダブっているのは左の蝶の。真珠に蝶に薔薇!乙女すぎ!


フウ……。となってたら今度は隣の30円ワゴンセールで 氷室さんの「ざ・ちぇんじ!」が上下巻揃ってて、また焦って買ってしまいました。これまた処分されそう感が漂ってて無視できず。なぜ私は焦って本を買っているのだ。でもこれはほぼ記憶にないくらい昔に読んだっきりで初読みに近いし、楽しみに読んでみようと思います。私は世代的に漫画版のほうが印象が強いなあ。花とゆめ全盛期。