FUKUSO(服装) 1972年2月号
最近気になっている雑誌。1970年代のティーン女子向けファッション誌です。監修は田中千代。70年代に休刊になっています。まるっと半世紀くらい前の雑誌ですね。
この雑誌かわいいんですよ。私は全く存在を知らなかったのですが、確かスタイリストの中村のんさんが若い頃好きだったと仰っていたのを何かで読み、へ~そんな雑誌があったのかあと気になっていて。で買えそうな値段のものを見つけたので入手してみました。ちなみに古書界隈では結構人気があるのか、そこそこの金額になっている物が多い印象。
まず写真がかわいい。ガーリーなのです。基調が「少女」という感じ。かつちゃんと当時風のイマっぽさもあって、後年で言うところのCUTiEとかあのあたりっぽい雰囲気もあるかも。初期ananのティーン版的でもあるかな。ヒップな感じといいますか。
よく出てくるブランドはMILK(原宿ミルク)、BIGI(菊池武夫)、鈴屋、ヴィヴィド(森英恵)等々。いわゆるマンションメーカーも始まってすぐの時代なのでブランドという括りもまだ曖昧なくらいの雰囲気があります。デザイナーの名前だけが載ってたりとか。しかしMILKの、ガーリーにおける当時から今に至るまでの不変の強さってすごいな。
そして「コム・ド・ギャルソン」も。「デ」でなくて?なのですが、つまりデかドかの表記も定まっていないくらいのブランド初期から取り上げられていたということですね。その更に前が「レイ・カワクボ」なのだと思う。
まだ服を自分で洋裁するのも一般的な時代なので、型紙や田中千代のテキストも載っています。「ポップなティーン向け装苑」という感じもあるかも。
菊池武夫さんのページ。とってもガーリー。
ツィギーの映画『ボーイフレンド』にちなんだページ。今も活躍する伊藤佐智子さんのお名前も見えます。私も昔からとても好きなスタイリストさんです。
FUKUSOは全体的にイギリスっぽい空気を感じます。アイビーというよりフレンチというよりロンドン。きちっとしたジャケットやチェック柄も結構出てくる。表紙もそうですね。
ガーリーといえばセーラー。セーラー&ハーフパンツ&ソックスって本当に不変の組み合わせなのだなあ。左のセーラーワンピはもちろん(?)原宿ミルク。
これもどちらも原宿ミルク。全体的に写真が凝ってますね。手をかけて作られていた雑誌なんだろうなと感じます。
ヘアメイクのページ。リボンとかついてていわば定番の少女風ヘアメイクという感じなんだけど、70年代的にアップデートされていてオシャレ。
この女性はどなたかというと1972年当時の「コム・ド・ギャルソン」のデザイナー川久保玲さん。お若い!のももちろんですが、個人的におお、となったのは川久保さんが着ている服。セーラーなんですよね。しかもシンプルで制服っぽい。のだけどファッションとして着ているというのもちゃんと分かる。若き日の川久保さんが制服的なセーラーを着ているというのは、個人的になんとも納得するものがあります。ギャルソンってそうだよね、という。
初期のギャルソンが画期的だったのは、「少女の日常着だったアイテムをファッションとした」点ではないかと、私は以前から思っています。
日常着とはつまり普通の服のことです。ハレというよりケのほうの服。それこそ制服とか、セーラーとか、レースやフリルのないシンプルな丸襟のブラウスとか、グレーのプリーツスカートとか、シンプルなウールのジャンパースカートとか、そういうものたち。
それらって本来は狭義の「ファッション」ではなかったと思います。昭和中期あたりにはお母さんがミシンで縫ってくれたような普段着ですよね。ましてやモードでは全然ないわけで。
それらを敢えてファッションとして捉え直して、十代二十代以上の女性も着られるブランドとして成立させたところに、初期コム・デ・ギャルソンの斬新さがあったと想像します。その感覚は現代のガーリーファッションの源流ともなったと思う。
そして日本的トラッドとも言えるそれらのアイテムは、実はギャルソンで定番として何十年も売られ続けているものたちでもあると。そういうブランドではと思います。