20241127

着用水晶

ラックルチルクォーツの指輪。一年くらい前? 買ったものです。ずっとなんとなく大きめの鉱物の指輪を探していて、ルチルなのも存在感のある大きさも気に入って。なんか未来っぽくもある。カジュアルな服や古着にこういうのをポコンと着けるみたいなコーディネートが好きです。


最近ふと、私はモノを買う時に「鉱物っぽい」というのがひとつの基準になっているかもしれないなあと思いました。この指輪はぽいというかまんま鉱物ですが。
どこか鉱物的な印象の茶碗とか。箱とか、シャツとか、デニムとか。素材自体はまったく鉱物とは関係がなくても、受ける印象がどことなくそういう感じのするもの。インテリアでも照明や棚や椅子も総じてそういうものを選びがちだと思います。無意識ですけども。
鉱物が好きだから……というより(好きですが)、自分の中に嗜好のコンセプトがなんとなくあるとモノを選びやすいということですかね。基準点みたいな。それが私はたまたま「鉱物っぽい」であると。

 
そういえば今よく使う香りも「クリスタル」だなと思って一緒に撮ってみました。シャネルのCRISTALLE。これ古いんだけども。最近ボトルデザインが変わったはず。シャネルなのでどちらにしろ大幅には変わりませんが。
そういえばシャネルもどこか「鉱物っぽい」ブランドだなあ。

クリスタルは結構独特の存在だと思います。シャネルだし昔からの定番ですが、No.5のオーラやCOCOの華やかさやCHANCEのようなモダンさには及ばないし、とはいえ軽んじられるほど無名でもないし、なんか古いのにパルファムではなくトワレだし、等々。
香りも、いい香りといえばいい香りだしクリスタルというだけあって爽やかですけど、どうも根本的に癖がある。モス(苔)ですし。なかなか好みが分かれる気が。愛用している私でもいい匂い!という時と、う~む……という時があります。そもそもこの香りがロングセラーというのが不思議といえば不思議。唯一無二なのは確かだと思います。
薄暗い森の奥深く、泉のほとりに苔と水晶が生えていて、もはや家に帰る道はわからないような、辺りに漂う香りはあくまで爽やかな仮面をかぶっているような、そんなイメージ。

シャネルのフレグランスって安くはないですしここ数年の値上げも激しいですけど、ニッチフレグランスが世界中で勃興し価格が高騰し続ける今となっては、もはや結構コスパが良い気もします。クオリティは折り紙つきではありますし。シャネルより高い香水、今もう全然あるもんね。

20241104

北国のワンストラップシューズ

し前になりますが、道立文学館で開催中の「氷室冴子の世界 ふくれっつらのヒロインたち」展へ行ってきました。氷室冴子は北海道出身の小説家であり、1980~90年代に少女小説で一時代を築いた人でもあります。

岩見沢市で生まれ育った氷室さんの幼年時代を詳しく知られたのも嬉しかったし、小説家として生きていく決意をした経緯、少女小説ブーム、映画や漫画の原作、エッセイや大人向けの作品への展開、と時代の変化と氷室作品の関わりとを時系列で見られたのも良かったです。氷室さんの活躍した時代とは、少女たちを取り巻く社会や環境がさまざまに変化していった時代であったのだなということも感じました。氷室作品もそこに呼応していたのだなと。
あと岩見沢って自分にとってちょっとだけ縁のある町かなとも。父親の仕事の関係で子供の頃に連れられて行ったりもしていたし、岩見沢に住んでいた友達もいました。その友達も利用していたJRの岩見沢駅が火事で焼失して驚いたり、数年後新しく建てられた駅舎がグッドデザイン大賞を受賞してまた驚いたり。


個人的に改めてそうか~と思ったのは、『クララ白書』以前と以後でひとつがらりと時代が違う感じがしたところ。というのも、単純にコバルト文庫の表紙がもう違うんですよね。世界観が。
これを書いていた作家さんが、
こうなる。この間たった一年。
『さようならアルルカン』も内容に合っているしとても好きな表紙ですが、原田治のモダンなポップさは単純に世界が全然違う。というか『クララ白書』が今のエンタメ小説の表紙水準と比べてさえオシャレというか。このままグッズにできそうだもんな。そしてこのシリーズで氷室さんは大ブレイクし、少女小説家のトップバッターになるのですね。この2つの表紙の違いが、少女小説界全体ががらりと別のフェーズに変わった時期だったことを象徴してもいるように感じました。
ちなみに今気づいたんですが、ヒロインがストラップシューズを履いているのだなあ。母が作品のモデルになった寮のOGなのですが、昔は指定靴?上履き?が革のストラップシューズだったそうです。女子校だからね。

たぶん私より下の世代の方だとあまりピンと来ないかなと思うのですが、少女小説における氷室冴子の存在というのはとても大きなものがありました。
まず前提として、ネットもケータイもない時代にはコバルト文庫やティーンズハートといった少女小説は十代の女子の中で広く安定した地位があったんですよね。最盛期であったろう80年代を過ぎた私の十代の頃でも、当時一番有名だったティーンズハートの折原みとはよほど本に興味がないとかでない限り誰でも名前くらいは知っていたし、読んでいる子も多かったと思います。当時のオリーブで少女モデル時代の観月ありさが「折原みと先生の作品が好き」って言ってたなあ。後に超有名ナースになる人が『時の輝き』を読んでいたということか。
そしてその少女小説のポピュラリティの下地を作った一人が氷室冴子なわけですね。

氷室作品は私の頃だと、花とゆめで連載されていた漫画版の『なんて素敵にジャパネスク』が有名だったと思います。小説は『銀の海 金の大地』が雑誌Cobaltで連載中で、これもめっちゃ面白かったんだよなあ(未完)。ただ当時の氷室作品は女子がみんな当然知っているというより、本や漫画が好きな子は知っているという感じだったんじゃないかな。
作品自体がとにかく面白いし、既に少し上の世代の作家さんという感覚でありつつ少女小説の重要な存在として厳然とそこに在る、という印象を持っていた気がします。


あらゆる少女のために、女性のために、誰かのために、古代から現代までを駆け巡って作品を書き続けた氷室冴子。彼女は私にとって、架空の大きな女子校の中で代々語り継がれている伝説の先輩のような存在かもしれません。会ったことはないけれど知的で筋の通った、けれど明るくて優しい行動派の同郷の先輩。
まだ読んだことがないという方はぜひ。

文学館のカフェスペースでココアを頂きました。雨の日だったので温かくておいしかった。文学館や美術館に併設された素朴なカフェが好きです。
 
文学館は私にとっての少年世界的スポットでもある中島公園の中にあります。人慣れしていて遊歩道を横切りまくるカモたち。
 
札幌はもうだいぶ紅葉しています。