ニューヨーク・ヘラルドトリビューンと古い新聞社の社名が黒字で刺繍された白のニット。ハイネックで半袖。これは何かというと、これです。
もちろん1960年の映画に出てくる服と全く同じものを私が持っているわけではなく、2年ほど前に購入した今の製品です。
このニットがちょっと面白いのは、NYタイムズ社が公式に売っている、いわば新聞社のグッズであること。「勝手にしやがれ」に過去の自社の服が出てくることを踏まえた復刻でありセルフパロディとも言えますね。さすがNYタイムズ、グッズまで気が利いている。
Knickerbocker(ニッカボッカ!)というお洒落ブランドが手掛けているためデザインや作りもかなりちゃんとしていて着やすく、気に入っている服です。ポルトガル製でコットン100%というのも嬉しい。
映画の登場人物で最も好きな衣装の人は誰かと言われたら、私は「勝手にしやがれ」のジーン・セバーグなのだと思います。昔から。
セバーグが着ているのは今の人間の目から見るとどれも普通のアイテムです。ボーダーシャツ、クロップド丈のパンツ、襟付きワンピース、カーディガン、ノースリーブ、ローファー。
このヘラルドトリビューンのニットも、つまり今でいう企業名のロゴTみたいなものですしね。似たような服って今ならGAPやユニクロでも大体揃えられちゃうのでは。
言い換えると、今世界中で定番として当たり前に流通するアイテムたちを最初期にファッションとして「選定」してみせたのがゴダールでありセバーグだとも言えるかもしれません。
アイテム自体が特別なものというより、元々世の中にあるものをシンプルに(しかしおそらくは細心の注意も払いながら)うまく組み合わせて着るという感覚。
今でこそ普通なその着方こそが当時新鮮であり、数十年後の現代にもセバーグが不動のスタイルアイコンである理由の一つなのかなと思います。現代のファッション感覚の端緒をそこに見ることができるのではないかと。
ベリーショートにボーダーにプリーツスカート。1960年の映画ということは前年まで50年代なのでいわゆる典型的な60年代スタイルともまた違う。そのバランスも絶妙なのかなと思います。
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