20250603

すてきな模造真珠

術の森美術館の「コスチュームジュエリー 美の変革者たち」を見てきました。監修されているコスチュームジュエリー研究家の小瀧千佐子さんも以前から個人的に気になっていた方で、札幌でも見られるんだ! と思い行ってきました。 

コスチュームジュエリーとは、平たく言うとダイヤモンドやエメラルドのような宝石が使われていないジュエリーのことです。ファッション的・モード的な、デザインやボリュームに富んだものが多いのも特徴。
実際、今回見た一番の感想が「でっかい!」だったかも。展覧会に映える大きめのものが選ばれていたとは思うのですが、にしても全体的にでかい。宝石や金銀を使わず、デザインに振り切れるからこそ、思い切った大きさに作れるということでもありますね。


あとなんだか面白かったのが、宝石でないとはいえどれも高級品ではあるわけですが、庶民の私にもどこか見覚えのあるくらいの高級感でもあったことです。
これが王族や貴族の宝飾展だったらば、わ~見たことない豪華さ!という感じだったと思うのですが、コスチュームジュエリーは私でも知らなくはないなという高級感なんですよね。素材感とか細かい作りの部分も。もちろん十分立派なのですが。
私が持っているような手頃なヴィンテージジュエリーたちの、元ネタがこれらの作品たちなことも多いのだろうなとも。トップデザイナーが作り、当時の多数のメーカーがその真似をして一般向けに大量生産されたであろうものたち。これは今のファッション界も同じ構造ですね。


シャネル・スキャパレリ・ディオールという20世紀モード史の巨匠のコスチュームジュエリーが一堂に会しているのも今回の目玉だと思います。
作品としてとにかく美しかったのはスキャパレリ。特にメタルでできたリボンモチーフのネックレスとかサーカスモチーフのものたちが好きだったなあ。高級素材ではないからこその、そこを逆に活用したデザインを、コスチュームジュエリーの初期にして既にして理解しきって作られた作品たちに感じました。それこそシュルレアリスム的というか。


その一方で、もしも今日パッとこの中のどれかを身に着けて出掛けなければいけないとしたら、咄嗟にスキャパレリよりシャネルのネックレスか何かを掴んで行くかもなあと思ったのも事実。なんか壊れにくそうだし(笑)。シャネルはファンタジーではなく現実のためのアイテムを作った人ですよね。この2人がライバルであったのも納得。シャネルのジュエリーだとビザンチン系のゴツゴツっとしたものたちが好きでした。色遣いが独特。

長すぎる模造パールのネックレスとツイードのシャネルスーツ。どちらも現在に至るまでシャネルのアイコン中のアイコンですね。私も結局1920年代のパールのネックレスを二連三連にみたいなのが永遠に好きだもんな……。

 
ディオールのドレスとパリュール(ジュエリーのセット)。1950年代のものなのでまさしくニュールック時代。このドレスは実物がすごく小さくて、昔のレディの華奢さを感じました。ドレスの黒とジュエリーの水色という組み合わせが上品。


スミレモチーフも色々。下のガラスの葉のものは私が持っているヴィンテージのスミレっぽいイヤリングを思い出しました。使いたいんだけど落とすのが怖くてほぼ使ったことがない。

このあたりは高級モードブランドともまた違って、アメリカのトリファリ、ケネス・ジェイ・レーン、ミリアム・ハスケル等のコスチュームジュエリーブランドのものです。これらのブランドは私も昔からよく見かけるので知っています。つまり華やかなものもありつつ大衆向けでもあって、小さいものなら今もネットオークションやヴィンテージショップ等で数千円から入手できるはず。高級でもあり身近でもある、それがコスチュームジュエリーなんですね。

 
トリファリの生き物ブローチシリーズ。かわいい。上はルーサイトの透明系、下はエナメル彩。海の物モチーフのジュエリーも好きです。マリンだし、博物でもあるし。あとなぜか昔からホタテっぽい貝柄デザインのジュエリーが好き(笑)。


手前から、ルーサイトの船のブローチ、ベークライトのブレスレット、セルロイドの櫛。このあたりの20世紀初頭の素材やデザインが好きです。「一昔前の科学」ぽい素材や存在感のアイテムがどうも好きなんですな。


 
SPURの小瀧さんの以前の動画も。コスチュームジュエリーについて分かりやすく解説されていて、コレクションも見られます。